外伝その1 思い出は道とともに・・・
今月の社内ミーティングが終わった。今日こそは
自分の言いたいことをきっちり伝えたいと考え、
A4・3枚分の発表文を作成した・・・にも関わらず
どうにも巧く伝わった気がしなかった。
ささいな事、でもだからこそ自分の無力さ加減に
少々肩を落としつつ、家に帰った。
今日は、ミーティングが終われば飲む、だから飯はいいと
言っていたのだが、それは都合でキャンセルになったので空腹。
今更飯を用意してという位なら、車に乗ってファミレスにでも
行こうと思い、家に着いた早々、その事を伝え
着替えも適当にレバンテに乗り込んだ。

どうせなら行くなら”一人夜会”だと思い、いつも
つくばーど千葉夜会をやる
湾岸道路沿いのガストを目指した。
しばらく走っていると、CDチェンジャーがCDを
入れ替えるモーター音がした。
小室哲也の「Running To Horizon」が
流れてきた。シティハンター3のオープニングソングだ。
あれっ?このCDは嫁の趣味じゃないよな・・・でも僕も
セットしておいた覚えがない。
しかし気に入っている曲が僕の気持ちを後押ししてしまった。
目的の筈のガストを横目に見ながら通り過ぎた。
どこにいっちまおうか?・・・・・・館山?
いや、携帯電話を忘れているし、いくらなんでも
それはうちを心配させるだろう。
少しの間、ダラダラと湾岸道路を走り続け、ウインカーを
左にいれた。

茂原街道・・・別に夜景が拝めるわけでもなく、
何か楽しげなものがあるという訳でもない。
(やたらとラブホテルは多い)
途中、長柄町の辺りか?ちょっとした山くだりが
ある以外はたいして楽しい道ではない。

5年前、嫁がまだ嫁じゃなく「彼女」だった頃に
茂原に住む彼女と千葉市に住む僕はこの道を
互いに行き来しあっていた。彼女は夜勤が中心、僕は
月金の日中サラリー野郎だから、休みに会って出掛けることは
ほとんどない。この道の行き来だけが僕らを繋いでいた。

この道を茂原方面に向かったのは多分、4年ぶり位のこと。
しかし4年くらいじゃこの道の景色は大して変わってはいなかった。
相変わらずホテルだけは多い(苦笑)ちなみに・・・入ったことはない。
まだ時刻は零時を指してはいなかった。割合車は多い。
でもつまらないんだけど、変わらない景色を
見ながら走るには丁度良いペースだった。
当時僕はエスクードコンバーチブル、今のレバンテとは
ドアの枚数もシリンダの数も違う、ついでに屋根もない。
でも走ればあの頃の気持ちが蘇ってきた。少し気持ちが明るくなった。
ハンドルを握り、懐かしい道を辿れば還ることが出来る。
これって幸せな事なんだろうな・・・すっかり気持ちは癒えていた。

この道の唯一の楽しみ、山下りに差し掛かった。相変わらず
前走車がいるからたいしてペースはあげられない。まあ、
いいやと思っていたのだが、この下りにかかってから対向車と
すれ違っていない、一本道だし・・・
下り終えた先のコンビニの駐車場で思わずUターン。
予想通り、前走車なし!MTシフトだった当時を思い出すかの
ようにATを2速にセレクト。3000回転ほどで
静かに動いていたH20Aは、5000回転ほどになり
唸りを上げた。これはやっぱりあの頃とは違う音、違う感覚。
でも、気持ちの良いことに変わりはない。

今度こそ夜会のガストを目指し、レバンテは山道を駆け上がった。



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