そして彼女はやってきた
 夜勤明け、真っ暗な仮眠室から抜け出してみたら、眩しい朝日が視界
を直撃しました。おおっ今日はいい天気だあ。籍だけは入れてから10
日、ついにあの人がうちに嫁いで来るのです。うちといっても、6畳1
間の社員寮ですが・・・いや関係ないですね。私等夜勤チームと交代で
出勤してきた日勤チームの後輩達に今日買い物行かない?夕方迎えに来
るからと声をかけてから、帰社しました。
 本来なら電車に乗って取りに行く筈だったのですが、その旨を連絡す
ると”じゃあ届けますよ”と車屋さんのありがたいお言葉を頂きました。
 だって納車費用払ってないんですから。何はともあれ社員寮で待つ事
になりました。夜勤明けだというのに眠れない!お昼くらいまで待って
いたところ例の廊下の電話が鳴りました。
「多分近くまで来たと思うのですが・・・」
「あっはい。今すぐに外に出ます!」
 その時は遂に訪れました。磨かれた白いボディを初夏の太陽で反射さ
せつつ・・・嗚呼、なんて格好良いのだろう。やがてコンバーチブルは
停車し、運転席からあの店員さんが降りてきました。おっ今日はツナギ
だ、黒いツナギで黄色い刺繍でSUZUKIとありました。いつもの営
業服より格好いい(失礼だな)なあと思ったことを今でも思い出すこと
が出来ます。軽く挨拶を交わし、書類などの確認を行うと店員さんが提
案してくれました。
「せっかくだから幌を降ろしてみましょう」
 実はこの車の幌取り付けの手順は一通り教わっていたとはいえ、まだ
外したことはなかったのです。今覚えば、普通は購入前に確認するだろ
うと当時の自分を笑い飛ばしたくなりました。
 幌は3分ほどで全て取り外されました。3分というとオープン2シー
ターを所有したことがある方にとっては、そんなにかかるの?と思われ
るかも知れませんがクロスカントリー四輪駆動車の幌としては、劇的に
簡単な部類になることを書いておきます。
 Bピラーとフロントガラス、ドアが残ったその不思議な姿。オープン
2シーターとも勿論違うし、ジムニーの幌車ともまるで違う。この車だ
けがもつスタイルです。あらためてとても好きになれそうな気がしまし
た。
 一通り説明を受けた後、幌の方はあえてそのまま降ろしたままにして
貰い、店員さんと別れました。私はそのまま寮の階段を駆け上がり、部
屋に戻って、あらかじめ用意しておいたモノを取ってきました。車載用
のMDプレーヤーです。元の愛車ジムニーから取り外しておいたもので
す。壊れてはいないか?あるいは壊してしまうのではないか?少々不安
ではあるものの、これだけはすぐに伝承したいと思ったいましたから、
迷わず内装のパネルを”触り”ました。これが拍子抜けするほどジムニ
ー共通の部分が多く、これなら”触り”やすいと適当にやっているうち
に約1時間ほどで無事取り付け完了しました。
 愛車が届いた!カーステレオが付いた!次々と歓喜の波が押し寄せて
きます。さて次はいよいよエンジン始動!○マト発進!では次号!(笑)



<< return  ・  next >>