胸焦がれて・・・
あの白いヤツと出会いから3日経過していました。あれから休みの日
は寮の汚い6畳一間の中でひたすら四輪駆動車の雑誌を読み返していま
した。あの車、平成元年式ってことは・・・エンジンの排気量が160
0ccなのは現行車と同じだけど、マイナーチェンジ前だから100馬
力じゃなくて82馬力なのね、などといった具合に。しかしバルブの数
が8つだとか車重はこんなもんだとか、そんな事を読んでいても実は良
くわかっちゃいなかった訳ですが(苦笑)まあ若い男らしくいわゆる「
モンモン」としていた訳ですね(爆)あのとき私に感染してしまった欲
しい欲しい菌はこの3日間ですっかり体のスミからスミまで蔓延してし
まいました。
部屋を出て廊下に出ると各階にひとつづつしかない公衆電話に近寄り
ます。手には10円玉数枚と戴いた名刺を握りしめて。
”あ、もしもしこの間エスクードの方を見せていただいた者ですが”
あの店員さんちょうどいました。ホッとしながら話を切り出すとなん
とも無情なお話が・・・
「あー、あの車売れてしまったんですよ・・・」
がーんがーんがーん・・・・・・・・・しかしこうなるともう鞘から
抜いた刀を収める気には到底なれず、思わず言ってしまいます。
「同じような車を探して頂けますか?」
とりあえず受話器を力なく戻してとぼとぼと部屋へ。
あまり出回っていない車だしいきなりすぐに出てくるって事はないだ
ろうな・・・ハァ〜と部屋の中には重〜い空気が充満するのです。さら
に悶々とする訳です。据え膳食わぬはなんとやらとは良く言ったもので
す(笑)嗚呼、絶世の美女と交わる機会を自ら逃してしまった(爆、っ
ていうかセクハラ?)俺は馬鹿な男だあぁぁぁぁぁジリリリリリリィ!
んっ!?廊下の電話が鳴っていました。いつになく早く受話器を取り
に行く私。受話器の向こうから今一番聞きたい声が聞こえてきました。
「あのう新さん、あの車"で"いいんですか?」
「あの車"が"いいです!」
「じゃあ買い戻します」
「ええっ!?そんなこと出来るんですか!?」
今まで平凡な21年の人生中、一番特大の逆転ホームランを放つ事に
なろうとは!!いやホームランを打ってくれたのはこの店員さんですね。
なにはともあれ次回来店する日を決めて受話器を再び置くことになり
ました。ええとっ購入に必要な書類は・・・あっ駐車場確保だ!
翌日出社した私はKさんに事の経過を恐る恐る白状致しました。Kさ
ん曰く、あ〜やっぱり買ったんだあ、そして苦笑い。ホッと安堵して再
びお店を連れていって戴くことをお願いするのでした。
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