屋根のない車

 さて白狼伝の第1回目です。まずはやはりこのお話の主人公である白
狼こと「エスクード」との出会いからでしょう。
 平成7年7月のことでした。当時私は車を所有しておりませんでした。
 実は2ヶ月前まではスズキの「ジムニー」に乗っておりました。これ
筆者の最初の愛車となる訳ですが、とある理由で突然手放すことになっ
てしまいました。この”突然”の理由は、また後ほど書くとお約束致し
ましてとりあえず、平成7年7月なのであります。
 愛車を失ってから約2ヶ月間、毎日の様にトレーニングジムに通って
おりました。体型が・・・というのも勿論な理由なのですが、休みに何
をしていたら良いのやら・・・とりあえず体でも動かしていれば、とい
う思いだったかも知れません。自分にとって車というものがこんなに大
事な物だったのねと痛感していたのです。
 そんな7月のある日の事、会社で中古車情報誌を読みふけっていた私
はこんな車に目が止まりました。”ジムニー1300cc・昭和60年
式・28万円”元々ジムニー乗りだった私、本当はこの間デビューした
ばかりのジムニーシェラが良いけれど、あと2年で会社の寮を退寮しな
いといかんし・・・おっでもこの位なら!とちょっと希望の光が差して
きた訳であります。当時自分の興味がある車の一番はやっぱりジムニー
!あとは出たばかりのワゴンRやエスクードのV6・2000ccとい
ったところでした。友人が乗っていたプリメーラのような車は綺麗でス
マートできっとデートじゃ活躍するんだろうな、という乗用車的な車に
対する憧れも多少はあったものの、やはりここは硬派に!という半ば意
地を張っていたんですね。なにせまだ22歳ですから。
 そこなら知り合いの店員がいるよ、見に行ってみるかとは会社の上司
Kさんののありがた〜いお言葉。かくして夜勤明けで上尾市のディーラ
ー系に行ってみることになりました。
 いつも出勤は車というKさん。会社の裏手の駐車場に止まっていたの
はなんとも見慣れない青い乗用車。それはスズキのカルタスでしかもコ
ンバーチブル(オープンカー)なのでした。初めて乗り込んだこの青い
オープンに私は興味津々。そんな気分を理解してくれたのか、屋根を開
いてくれました。自分の目線を遮るものはフロントガラスだけ。空も横
に流れる国道17号線浦和〜大宮の景色も窓越しじゃないことがこんな
に新鮮だったとは!
 ”オープンカーってこんなに気持ちがいいものなんですね〜”とばか
りにオープンカーに対する憧れが沸沸と湧き上がっていきます。あ、で
も防犯とかどうなんですか??
「そんなもの鍵なんか閉めるから大切な幌を切られるんだ。俺は普段か
ら鍵はかけない、何より盗まれそうなものは置かない」
 なるほど〜と、どんどんオープンカーに対する壁みたいなもんが取り
払われていくです。
 この時、これから向かうお店に白いオープンカーが置いてあることは
知りもしない私を乗せてカルタスコンバーチブルは梅雨らしい雲の多い
空の下を走り抜けるのでした。



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