今が一番の紅葉の見頃という京都市右京区の「京都コスモスパーク
」にて開催された「4WDPROJECT」主催の「PROJECT
CUPXCダートレース」。ただのダートコースではなくモーグル、
テーブルトップといったクロスカントリー要素までも含んだトラック
を1時間走りきり、その周回数で争う過酷なレースだ。
このレースへの参戦を最後に引退する事になった「WESTWIN
」の「E376」号をどうしてもこの目で見たくて、およそ600k
mの道程を越えてここまでやってきた。
「WESTWIN」とその応援で福岡から駆けつけたメンバーはバ
スで9時間を走りなんとか到着。いずれも苦笑いしたくなる程の強行
軍である。
1周の予選を終えて遂にレース開始!「E376」号はグリップ不
足に悩まされながらも好位置をキープし、跳び出した。
「E376」号はエスクード1600cc、レース規定によりクラ
スはジムニーと同じ。軽量+ターボのジムニーがここではどんな車よ
りも手強いライバルになった。また「E376」号の他にも2台のエ
スクードが参戦。自然、この2台とはよく絡む。ジムニーもそうだが
他のエスクードには絶対に負けて欲しくない。応援にも熱が入る。
コーナーの立ち上がりはジムニー有利か、直線からの果敢な突っ込
みでオーバーテイクを試みるものの立ち上がりで置いていかれそうに
なる。しかし「WESTWIN」の2人のドライバーはトライアル競
技の職人である。トライアルセクションに勇猛果敢に飛び込み、時に
は車を飛ばしながら相手を追い抜く。序盤にジムニーと追突し運転席
側のドアを大きく凹ませるが、むしろドライバーの”斬レ”が増した
様だ。実に頼もしい走り、そしてトラックの中で1番に格好いい車だ
った事はひいき目に見た事を差し引いても間違いなかった。
僕らが異変に気が付いたのは1回目のドライバー交代のピットイン
の時だった。やけに左リアのタイヤとボディの隙間が無くなっていた。
実はこの時にショックアブソーバーの取り付け部がもげるというトラ
ブルが起きていた。しかしピットアウト、どう見てもトラブルを抱えて
いるのにも関わらず、斬れた走りを何周も続けた。何故レーススピード
で走っていられるのか僕には理解出来なかった。しかしやがてそのタイ
ヤとボディとの隙間は完全に失われボディとタイヤが干渉し続ける事態
に。実はコイルも脱落してしまい、ショックとコイルというアキレス腱
を完全に失っていたのだ。
これ以上は危険とオフィシャル側に判断され、残念ながらリタイヤ。
「エンジンは好調だった、足回りさえ問題起きなければ僕は本当に表彰
台狙っていたんですよ。3位あたりを走っていたのになあ」と悔しがる
ドライバーでありこの車のオーナーである島さん。確かに残念ではあっ
たけど、しかし島さんが言う通りの素晴らしい走りを見る事が出来てそ
れだけで充分感激した。さらに「E376」号をコース外に退避させる
為になんと僕がそのハンドルを握る事になった。シートに付いてシミが
かつてこれが自分の車であった事を思い出させた。涙を堪えつつシート
に座り、なんともぎこちない動きで僕のレバンテの隣に駐車させた。
[おつかれーっ][いやあ、やっちまったよ][なんの、よくやったさ]
そんな聞こえる筈のない声を聞いた様な気がした。
お疲れ「E376」号。本当にカッコよかったよ。
|